龍馬史

この本、以前紙の本を買っていたよなあ、でも積読状態で読んでいなかったっけ?と思いつつKindle版を買って読み終え、読書メモを整理していたら、紙の本の自炊して読んでいたことに気づいた。
龍馬史
前回の読書と同じ部分(勝者が歴史を作るのではなく、敗者こそが歴史の修正にこだわり、作り直そうとする)に注目しているところもあったが、今回の方がきちんと読み込み、かつ、印象に残る部分が多かった。
この本は、小説(や、近年では大河ドラマ)で有名になった坂本龍馬という個人を幕末史の「大きな歴史」の中で捉えようと意図したと書かれているが、その試みは成功していると思う。例えば、磯田氏は坂本龍馬の功績で最も評価するのは私設海軍を作って運用したこととしていて、龍馬がそのようなことができた理由を彼の生い立ち(土佐の大きな商家の分家出身)だけではなく、土佐藩そのものが「産物まわし」という貿易・流通で金を稼ぐことをしてきたことと説明している。
その他にも兵農分離が進んでいなかった藩ほど幕末に活躍したこと、合図や薩摩藩の教育改革や人材登用改革のこと、大政奉還の解釈など、話が「坂本龍馬」という人の生い立ちや周りのことから、当時の社会やそれ以前からの「大きな歴史」の流れに広がっていく。そういうわけで坂本龍馬が武士の壁を軽く超えていったことを説明する2章と、龍馬の暗殺の背景について解明する3章は面白く読んだ。

龍馬史 (文春文庫)

龍馬史 (文春文庫)