戦後経済史は嘘ばかり

経済学を勉強していれば戦後の経済の流れを一通り知っている気になっている。しかし、以前に学んだこと、本で読んだことは間違っていることも多く、それが現在の経済の見方や対策の仕方を誤ったものにしてしまっていないか、というのがこの本の書かれた理由だと思う。

私自身が「そうだったのか」と思うものをいくつか取り上げると、

  • 傾斜生産方式が一定の役割を果たしたことは確かだが、それは「アメリカからうまく援助を引き出すことができた」という点だと評価されている
  • レーガン政権は「小さな政府」を標榜して、歳出削減を目指したので反ケインズ的な政策と見られがちだが、実際には典型的なケインズ政策
  • 1973年2月から制度上は変動相場制になったが、プラザ合意までは裏の介入で円安誘導されていた状態だった

というあたり。

それから戦後の経済の流れを把握するのについて重要だなと思うのは、原因と結果をきちんと把握すること。この本では「失われた20年」の原因としてよく取り上げられていたものに

があったが、これらはデフレの結果であって、失われた20年の原因ではないことを説明している。同じように「終身雇用」は高度経済成長の結果であって、終身雇用がなくなってきたから企業の成長が滞っているわけではない。原因と結果を逆に捉えているために今すべき経済対策についても考えを誤ってしまう例は多いと思う。