東京β 更新され続ける都市の物語

速水氏の本はどれも読んで面白いので、この本も海外出張時からSession 22のインタビューPodcastで聞いたりしてKindle版が出るのを待っていた。しかし、なかなか電子書籍が出る気配がないので、南部アフリカからの出張からの帰国後、もう直ぐ売り場が小さくなってしまう新宿南口の紀伊国屋書店で購入。ここで書籍を買うのはこれが最後だったかもしれない。
映画、TVドラマ、小説などの文学作品で東京の各所がどう取り上げられてきたかと辿る、「都市をメディアとしてみるという見方で書いたもの」。取り上げられているのは、東京湾岸、副都心(新宿と臨海副都心)、東京のランドマーク(タワー)、水運都市としての東京、新橋、羽田空港
この中で最も「都市をメディアとしてみるという見方」で東京の移り変わりを生き生きと描写できていると感じたのは、この本の約三分の1を占める東京湾岸。もう昨年の夏になるが、久しぶりに豊洲から勝鬨橋のあたりまで歩くことがあって、いつの間にかタワーマンションが林立している景色に驚いてしまった。
その驚きはきっと、筆者の以下の表現とつながるものだなと感じた。

かつては「不安」「不穏さ」の代表だった東京の臨海地域が、日常生活の舞台として自然に選ばれ、美しい光景として描かれるようになった。また、ここでの川沿い、新しい橋や高い建物が立ち並ぶ埋立地の光景は、新しく生まれてくるものを育む背景として描かれている。これからも湾岸の埋立地気を、ポジティブな意味合いを持って美しく描く作家の登場によって、実際の東京の湾岸地域もそのイメージを新しく変えていくことになるだろう