ピラミッド・タウンを発掘する

3ヶ月半の南部アフリカへの出張の岐路に読み始め、次の出張に向かうというタイミングで読み終えた。

ピラミッドには1996年、1999年の2回行ったことがある。1996年の時はクフ王の船を博物館で見た記憶があるし、1999年は半年ほどエジプトにいたので、ギザだけでなくサッカラのピラミッドも見に行った。その頃には早稲田大学の吉村先生のグループによって第2の船が確認された頃だと思う。この本から振り返ると、この時代もまだ「お宝発見」の時代だったのかなあと思う。

この本を読んで面白かったのは、歴史学者と考古学者は異なるという著者の指摘。

歴史学と考古学は似て非なるものである。その違いは、アメリカのテレビドラマでもお馴染みのCSI(Crime Scene Investigation:科学捜査班)に例えるとわかりやすい。目撃者の証言を追求する刑事を歴史学者とすると、考古学者はCSIメンバーである。

目撃者の証言には嘘や見間違いもあるが、考古学者は嘘を暴き、間違いを正していくことであると。その際に必要なのは書かれたテキストだけでなく、コンテクストを見ることであると。

もちろんピラミッドに関する謎、「どのように作ったのか」、「なぜ作ったのか」、「誰が作ったのか」を解明するためにこれまでも考古学的手法は取られてきたけれど、それは「お宝探し」の延長やそれにつながるものが多く、当時の人々の生活から上記のなどにアプローチすることが始められたのは2000年に入ってからということらしい。それから15年ほど経過して分かってきたピラミッドを作る人たちの生活、そこから導かれるピラミッドの謎解きを興味深く読んだ。

この本の最終盤は2011年に始まったエジプトの政変のことが書かれていて、それが発掘作業にも混乱を与え、それはまだ収束していないというところでこの本は終わっている。この本の続きが書かれる時は早くこればと思う。同時に、1999年に一緒に仕事をしたエジプトの人たちが無事でいること、政変前の生活を取り戻していることを祈りたい。

ピラミッド・タウンを発掘する

ピラミッド・タウンを発掘する