コーヒーの科学

ジンバブエに出張に向かう移動の途中で読み始め、10日ほどで読み終えた。

4年前にラオスの南部のコーヒーの生産に関わる機会があった。ラオス南部では標高1,000メートルくらいのところでアラビカ種の豆を作っていて、隣のベトナムのコーヒーと比べても数段美味しいコーヒーを飲むことができた。この本があったら当時とは違った視点でコーヒー栽培やその後の加工に関心を持てたかなあと思った。

この本は歴史や社会・経済との関わりにもページを割いている。例えば、スリランカはもともとコーヒー産地だったが、サビ病でダメになってしまったところをリプトン卿が紅茶の産地として開発したこと、2000年前後のベトナムの急速なコーヒー生産増加の背景の一つにロブスタ種の豆からも酸味を増し、苦味や土臭さを抑えたコーヒーを作り出すことができるようになったことなどは興味深い。

けれども、コーヒーの精製や焙煎の中でコーヒー豆の中にどのような科学変化が起こるか、コーヒーを抽出する時にどのような物質が流れ出し、それが人間にどのようにコーヒー美味しさとか苦味として感じられているかということを中心に扱っている本。時々ニュースになる、コーヒーを飲むと健康にいいとか悪いとかについても扱っている。

この本にはコーヒーの淹れ方が上手くなるコツなどが書いてあるわけでないけれども、読んでいて「そうだなあ」と思ったのはこの言葉。

「よいコーヒー」は「欠点豆を除いた良質な生豆を適正に焙煎し、新鮮なうちに正しく抽出されたコーヒー」と定義できるが、「おいしいコーヒー」は人それぞれで定義できない。

「よいコーヒー」であっても、実際に飲む人の嗜好によっては必ずしも「おいしいコーヒー」になるとは限らないが、「悪いコーヒー」は必ず「まずいコーヒー」になる

この本は講談社ブルーバックスの一冊だけれども、他の本と違って固定レイアウトではなく、固定レイアウト部分とリフロー部分のハイブリッドになっている。こうしてもらえるとやはりハイライトを入れたり、メモを書いたりしやすくてありがたい。