AIの衝撃 人工知能は人類の敵か
9月初めの数日で読了。以前に人工知能は人間を超えるかを読んだが、この2冊の本はAIのことを知るために同時に買ったのだった。ようやく比べ読みできたという感じ。
「人工知能は人間を超えるか」の方はアカデミックな視点が強く、人工知能研究の歴史や現在の研究の最先端のことに注力しているが、この本はその人工知能を次世代ロボットや将来の製造業(例えば工場の全自動化)に欧米はどのように活かしていこうとしているか、それに対して日本は官民ともに対応が遅れているのではないか、という著者の懸念が強調されている。
なるほどと思ったのが著者の創造性の考え方。Steve Jobsの「造性というのは物事を結びつけること(コネクション)にすぎない」という言葉を引いて、
(造性とは)一見異なる領域に属すると見られる複数の事柄を、一つに結びつける能力を持った人から生まれる
としている。そしてダーウィンがマルサスの『人口論』の「人口過剰」と「経済的弱者の淘汰」という考え方を活かして自然淘汰に基づく生物の進化論を作り上げた例を挙げている。
それから、機械学習、ニューラルネット、ディープラーニングなどのそれぞれの言葉の領域の違いや時代の移り変わりによる領域の変化もよく理解できた。現行、我々がパソコンのソフトなどで日常的に活用している「言葉を聞き分ける」「写真を見分ける」などの機能は、機械学習でも単純な部類で、統計・確率的な数値計算によって疑似的に表現したものにすぎない。一方で脳科学の成果を活用したディープラーニングが機械学習に導入され、本物の知能を作り出そうとする動きが急に加速し始めた。ニューラルネットも過去のものは単なる数値計算的な数学を採用していたのに対し、最近のニューラルネットは脳科学の研究成果を数学で表現したものに基づいていて、それが大きな違いとのこと。
- 作者: 小林雅一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/03/20
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