マルクスは生きている

まず自分では決して進んで手に取らない本なのだが、ここのところちょっと読む本が不足しだして借りて読んでみた。
唯物論の思想家・マルクス」、「資本主義の病理学者・マルクス」、「未来社会の開拓者・マルクス」という3つの章から構成されているが、全体をまとめて言えば、「まだ生きてかなければいけないなんて、たいへん」という感じか。マルクスを乗り越える思想とか(いわゆるマルクス経済学の中での)経済理論とか出てきてしかるべきと思うのだが、そうものが出てこないからまだ生き続けなければいけないような気が...。
Wikipediaではちょっと問題かも知れないが、唯物論から唯物史観が出てきたのだろうし、「きょうび」の「搾取」は労働者同士で行っているように見えるし*1、資本家と労働者の関係も資本論当時とはずいぶん変わったものになっているし、やはり商人とか貨幣を軽視して価格のシグナリングを軽く見過ぎてしまったように思えるし、来るべき共産主義社会主義時代*2にはちょっと人のことを信じすぎたような気もする。
ただ、資本主義社会の中で、供給>需要という現象が起こってくるというのは、*3そうかなと思える。それを修正したのがケインズ経済学だし、結局、社会保障の導入なんか導入された。イチかゼロかというような話ではなく、イチとゼロの間で微調整するような話をした方がいいと思うのだが。

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

*1:例えば同じ仕事をしていても正社員、派遣では給料が違うとか。

*2:この本によると、マルクスの時代にはこの言葉は道義であっただろうとのこと。

*3:原因について100%賛同できるわけではないが。