2011-01-01から1年間の記事一覧

もうダマされないための「科学」講義

5人の著者による、まさに現在直面している科学を巡る問題。それぞれの話の中身が濃かったので、それぞれ思うところを簡単にメモしておく。 科学と科学でないもの 疫学的な考え方が重要。ある確率でしか起きないものに対して因果関係を推定する学問は疫学しか…

これからスマートフォンが起こすこと

一ヵ月前に「iCloudとクラウドメディアの夜明け」を読んだ時にこの本のことを知ったのだけど、やっぱりこの本から読んでおいた方が整理はしやすそう。 スマートフォンとは何か、スマートフォン(とスマートタブレットなどのデバイス)が増加していくことによ…

スティーブ・ジョブズ脅威のイノベーション

スティーブ・ジョブズ脅威のプレゼンと一緒に買った本をようやく読み終えた。「プレゼン」はプレゼンテーションをよくするテクニカルな本だったと思うが、この本は普段あんまり読みたくないと思っている自己啓発本の匂いがする。それもあって後回しになって…

困ってるひと

ウガンダの出張前、出張後の日本にいる時間に読んだ。 ミャンマー難民のサポートをしていたら自分が難病にかかってしまい、日本の中で社会保障の網から落ちてしまう難民になってしまったという著者。私自身もレイヤーは違うものの援助の仕事をしているので、…

iCloudとクラウドメディアの夜明け

最初、クラウドメディアってクラウドコンピューティングのことかと誤解していた(その一部ではあるけど)。それからAppleのiCloudはともかく、ソニーのキュリオシティっていうのを取り上げるのはなんで?と思った。 クラウドメディアの目指すところは、所有…

スティーブ・ジョブズ II

二日ほどかけてスティーブ・ジョブズ Iを読み終わり、そろそろ第2巻が読めないかなあと思っていたら読めるようになっていた。土曜日一日で読んでしまった。 第2巻は1997年にAppleに戻ってから亡くなる直前まで(CEOを辞めたあとにもインタビューをしているよ…

スティーブ・ジョブズ I

今回の出張が終わって帰国してから読むことになるだろうと思っていたスティーブ・ジョブズの伝記、書籍とともにいろんな電子書籍フォーマットでも発売になったので、まず始めにKindle版の原書を買い、次にiOS版を買って読み始めた*1。 第1巻は生い立ちからア…

スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン

ナミビアから帰ってすぐにスティーブ・ジョブズが亡くなって、今回のウガンダの出張に出る時にはまだスティーブ・ジョブズ I、スティーブ・ジョブズ IIは発売ではなかったので、同じ訳者の本を持っていこうと思い立って、タイトルがちょっとなあ...と思いつ…

定家名月記私抄 続編

「名月記」の定家50歳から74歳までの記録。名月記自体の記録は欠けているのだが、筆者が周辺の史料をもとに書いている承久の乱前後がこの本のクライマックス。 定家名月記私抄よりも一段と京の治安が乱れ、公家が経済的基盤を失っていくが、逆に定家は主家の…

科学との正しい付き合い方

ちょっと遅くなってしまったが、ようやく読むことができた。 以前、狂牛病、ダイオキシン、冷凍餃子、福島の原発事故でもまた感じたけれど、科学的な考え方とか、リスクに対する考え方と「世間知」にずいぶん距離があるように感じてしまう。事業仕分けで科学…

アフリカ 資本主義最後のフロンティア

2010年の春に放送されたNHKスペシャルの取材のための情報収集から生まれた本。確か第1回のルワンダの番組は見た記憶がある。 あたらし経済開発の流れ、中国企業の活動、資源開発、ジンバブエの経済破綻後の話などが書かれているが、その中でも興味深かったの…

活字たんけん隊

二冊続けて固い本を読んだので、ちょっと軽いのを読みたいと思って手に取った。 高校生の時に初めて読んだ岩波新書が「活字のサーカス」だった気がする。最近ではこれを読んでいたけれど、懐かしさに引かれて買った本だった。 「活字のサーカス」は確かに「…

定家名月記私抄

日本史は好きだが、これだけじっくりと歴史史料に近いものをじっくりと読んだのは初めて。平氏の滅亡と鎌倉幕府の勃興という時代の変わり目の中で、京・公家側から見た不安や経済的な困窮の中で公家文化のある種最後の爛熟期のようなものを感じる。著者のこ…

随想録

時間を掛けてちびちびと読んだ。ようやく読み終えた。 この本を読み始めたのは、やはり金本位制からの離脱や日銀引き受けを行う中で彼がどんなことを考えていたのか知りたかったから。 「経済難局に処するの道」を読むと、金本位制からの離脱の中で高橋是清…

セックスメディア30年史

ちょっと手に取るのが恥ずかしいタイトルではあるけれど、荻上チキ氏の本なので読んでみた。 2章から4章はインターネットなどのメディアの発展の歴史、5章は日本のモノ作りを見事にシンクロしている。特に、インターネットがアナログのダイアルアップからISD…

原発・正力・CIA

家族との夏休みの間に一気に読んだ。 メディアを操る人が国会議員・国務大臣になり、一方は電波に関する利権の獲得・もう一方は親米の世論形成のために繋がるというような話が50年くらいにはあり得たのかというような思いを持ったが、思えばそのメディアグル…

茶 −利休と今をつなぐ

著者が試みた「茶の湯の全体像をつかむための本当の意味での入門書」になっていると感じた。お茶の本というと、いきなり作法の説明(=型)から始まるようなイメージがあるけれど。この本はそういう型の背景にあるものを感じ取ることができる。 もともと実家…

放射線のひみつ

平時に浴びる放射線量が1mSv/年なのに原発事故の緊急時はそれが100mSv/年に上がったり、収束時には20〜100mSv/時になったりというのがよくわからなかったが、結局、これまでの事例(ほとんどは長崎、広島の原爆時)での成人の発ガンリスクの上昇が100mSv/時…

高橋教授の経済超入門

日本・世界経済の一つのキーワード毎に2–3ページずつ、全部で60個のキーワードが扱われている。いつも読む高橋節の本とかなりかわった印象を受けるけれど、最初の方のキーワードは「日銀」、「日本銀行」、「金融政策」...と続いていて、普通の人がニュース…

経済復興 大震災から立ち上がる

ヨハネスブルグから香港に向かう飛行機の中で読了。 6月25日に東日本大震災復興構想会議が提言を出したけれど、この本を復興構想の提言とした方がいいんじゃない、と思った。もう限界の来ている「有識者」に振り付けをする諮問委員会のような会議よりも、専…

検証 東日本大震災の流言・デマ

東日本大震災は、インターネット(個人が発信できるメディア)が普及してから広い地域に影響の及ぶ災害だったこともあって、確かに様々な流言・デマが飛び交った。 本書でも書かれているけれど、Twitterなどで「拡散希望」とか有名人をクサビにした情報の拡…

震災恐慌! 経済無策で恐慌が来る!

この本を読んで感じるのは、歴史に学ぶことの重要さ。それは関東大震災だけではなく、阪神・淡路大震災も同様。特に阪神・淡路大震災はまだ「歴史」というには最近の出来事のように感じるが、ここから学ぶべきことがまだ十分には知られていないように思う。 …

日本の国宝100

見開き2ページか1ページで、ずらりと紹介された国宝セレクション。現物の写真は数える程度で、文章でその国宝の背景や美しさが説明されている。ここに書いてあるものは実物を見たり、日本史の授業で写真を見たものが多いはずだけど、あまり印象がないという…

ポスト・モバイル ITとヒトの未来図

最近のコンピューターの世界はすっかり「ポストPC」の時代で、スマートフォン、iPad、タブレットのようなデバイスが勢いを持ってきているけれど、その次にコンピューターと人間の関係がどんなふうになるか考えている本。 ITの潮流の最前線、ネット、インター…

根津美術館

先日、根津美術館で伊万里・柿右衛門・鍋島の展覧会をしているというポスターを見つけたので行ってみた。 ちょっと勘違いしていて、根津美術館のコレクションの展示だったので、それほど大きなものではなかった。 でも、一通り見てみて、やっぱり自分は鍋島…

経済学的思考のすすめ

上念さんが「日本ダメ論」のウソを書いたのと、岩田先生がこの本と福澤諭吉に学ぶ 思考の技術を書いたのは、同じ動機から来ていると思う。二人とも、デフレの害を説き、日銀の金融政策の発動を訴えているが、その声はなかなか一般の人に届かない。一方で、「…

「日本ダメ論」のウソ

リフレ政策政策や財政破綻論への批判を続ける著者が、次に書いたのは情報を正しく判断するための考え方を書いた本*1。この本では著者は「一人ディベート」を実践することを勧めている。あるイシューについて、賛成の立場、反対の立場それぞれの意見をネット…

プリンセス・トヨトミ

先週の日曜から読み始め、昨夜、今晩で一気に読み終えた。 相変わらずの万城目ワールド。突拍子もない話しだけど、よくできているのは「鴨川ホルモー 」や「鹿男あをによし」と同じく。空堀商店街や大阪城公園周辺というのはあまり馴染みの場所ではないので…

デフレと超円高

3月2日にセミナーに行った岩田先生の本をようやく読み終えた。 デフレと円高の関係の説明から始まり、それがなぜ悪いのか、デフレとは貨幣滴現象であること、日銀の金融政策がデフレの安定化であること、インフレ目標政策の導入でデフレも円高も止められる粉…

古事記を読みなおす

ずいぶん昔、「古事記は正確なことが書かれておらず、日本史研究の面からは全く意味はない。日本書紀こそが正式な歴史書だ」というようなことが書かれた新書を読んだような気がする*1。 この本は逆に、古事記こそが古層からの語りを伝えるもので、「序」は、…