定家名月記私抄 続編

「名月記」の定家50歳から74歳までの記録。名月記自体の記録は欠けているのだが、筆者が周辺の史料をもとに書いている承久の乱前後がこの本のクライマックス。
定家名月記私抄よりも一段と京の治安が乱れ、公家が経済的基盤を失っていくが、逆に定家は主家の九条家西園寺家の復活や妻の実家(宇都宮家)の支援もあってか、次第に経済的な苦境を脱していく。そんな状況の中での後鳥羽上皇との微妙な関係や、宮廷文化としての歌道から定家一家(冷泉家)の家道としての歌道の形成(源氏物語を始めとする古典や歌集の写本)。
一方で、連歌とか土倉とか、次の時代の言葉も出てくる。中世がもうそこまで来ている。
百人一首のエピソード、いつになったら出てくるのかと思ったら本当に最後の最後の場面だった。詳しくは書かれていないが、この本を読むと後鳥羽院、順徳院の歌が入っていることにとても深い意味を感じる。

定家明月記私抄 続篇 (ちくま学芸文庫)

定家明月記私抄 続篇 (ちくま学芸文庫)