ベーシック・インカム入門

ビエンチャンからバンコクに向かう機内で読了。
この本で繰り返される言葉、「働かざるもの、食うべからず」というのは我々に染み付いている価値観。この本はその染み付いた価値観をぬぐい去ろうと悪戦苦闘しているように見える。第1章では(特に日本の)現在の福祉国家モデルの破綻を説明し*1ベーシック・インカムの導入をしている。2章から4章まではベーシック・インカムを過去の社会活動や社会政策理論の中で位置づけてその正当性を明らかにしようと苦闘している。5章では現在の福祉国家モデルや税制とベーシック・インカムの橋渡しになりうる給付付税額控除(負の所得税)の話、6章で全体のまとめ。
理論的な検討は進んでいるが、それでもなお普通の人たちに染み付いた価値観や「財源は?という単純な質問」(それから多分、税金をたくさん取って沢山配分するということに対する普通の人たちの選好)にはまだ十分に答えられる段階ではないと思う。それでも、日本の明治・大正期の社会主義運動がほぼ現在の福祉モデルを目指していたように、時間が立てば労働と所得の分離とか、起こりうるんだろうか?
個人的には給付付税額控除(負の所得税)は現在の日本でも導入可能だと思う。リフレ政策で経済を安定化させた後で、民主党政権にはこういう事を着手して欲しかったんだけどな...。

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)

*1:生活保護の捕捉率が20%でしかないというのは衝撃的。