あの戦争は何だったのか

なぜ太平洋太平洋戦争は始まったのか、この戦争は何を目的にしていたのか、なぜ一度始めた戦争を終わらせられなかったのかについて冷静に書かれている。
気になったのは、この本の「あの戦争」はあくまでも「太平洋戦争」であって、日中戦争とか、さらにいえば日韓併合など、中韓が意識する「日本の侵略」はカバーできていないことである。この本では二・二六事件を太平洋戦争に突き進む大きなターニングポイントにあげているが、中国との戦争や朝鮮への侵略行為のことを考えると、違った解釈があるのかもしれない。司馬遼太郎などは、「日露戦争以降の戦争は、回避することができた」と言っていたと記憶している。
それでも、この本を呼んで感じるのは、エリート職業軍人たち(選ばれたわけでもなく、多くは最終責任を負わない人々)によって戦争への道が進められたこと、情報を客観的に分析・評価せずに、戦争を止めることができなかったことである。これは最近の官僚の問題だけでなく、日本における失敗した組織の典型で、日本人が本質的に持つ「組織の病理」なんだと改めて感じる。

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)