「小さな政府」を問いなおす

この本もずいぶん読み終えるまでに時間をかけてしまった。
著者はリフレ派の中心人物。時間の経過が日本のデフレを解決しつつあるように見える中で、構造改革政策(ミクロ経済政策)、特に政府のあり方について述べた本。
GDPに占める公共部門の財政規模や国民負担率を見ると、日本は他の先進国との比較では必ずしも大きな政府ではないが、田中角栄の時代以降、「結果の平等」を進める中で公共部門の効率性が低下し、民間への経済介入が高いレベルにあるのではないかというのが著者の考え。英国やスゥエーデンでどのように福祉型国家が導入され、1980年代以降どのように「小さな政府」が行われてきたか、小泉政権をどのように総括するかを述べている。
重要なのは、経済安定のための金融政策と、小さな政府を目指すためのミクロ経済政策は車の両輪のように同時に進められるべきであること。小泉政権における格差の拡大は、構造改革政策(ミクロ経済政策)を進めたためではなく、十分な経済安定政策(リスレ政策)を行わないからというのが著者の考え。
小さな政府(効率的な政府)を進めるためにPFI市場化テストが取り上げられているが、「PFI=公共による行政サービスの購入」という原則が導入されないこと、これらの施策で職を失う公務員の処遇の問題、公共に公権力の一部を任せること(現在では絶対あり得ない)を解決しない限り、政策として有効性を持つことは難しいだろうというのが、これらの施策に近いところにいる私の感想。

「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書)

「小さな政府」を問いなおす (ちくま新書)