イスラム金融入門
イスラムの国で仕事をしていてもあんまり意識することはないのだが、やっぱり初歩的なことでもいっておかないと...と手に取ってみた。
入門書なので、イスラム金融の仕組み(ムラーバハ、イジャーラ、ムダーラバ、ムシャーラカというような取引形態などやイスラム金融債「スクークの仕組みなど」)の記述は最小限で、中東を中心としたイスラム経済について書かれている。以下、気に泊まったことをメモ。
- 2006年現在、世界のスクーク発行高のうち6割はマレーシアで発行されている(マレーシアが意外にもイスラム金融立国)。
- スクークの流通市場で最大なのがUAE。2006年の取引の72パーセントを占める。
- サウジアラビア国内のイスラム金融市場は950億ドル(2006年)で世界最大。やはり人口規模が大きいためか。
- 世界の政府系ファンドの資産残高は1兆9000億ドルから2兆9000億ドルの規模で、英国の2007年のGDPの規模(2兆8000億ドル弱)を上回る規模。
- 英国の居住するムスリムの預金残高は10億ポンドだが、潜在的なリーテール市場の規模は50億ドルに達する。
- イスラム金融における送金システムは「ハラワ」とか「フンディ」と呼ばれる非公式なもので、伝統的に発達していた。
- GCC各国がインフラ需要を満たすためには、スクークを活用したり、プロジェクトファイナンスを活用するケースが多い。プロジェクトファイナンスは、イスラム金融と親和的。特にサウジアラビアでスクークの発行額の増加が大きい。
- イスラム金融は生産活動と一対一で対応するため、バブルが起きづらい。
著者はイスラム金融をアメリカ型グローバル資本主義の対抗軸になり得るものと見ている。サブプライム問題以降、先進国や新興国市場が景気後退になってきているが、それに伴って石油市場にも翳りが見られる。対立するだけでなく、共存する関係も見られると思うのだが。
- 作者: 門倉貴史
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/05/01
- メディア: 新書
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