about the work

先日エントリーしたノーベル経済学賞について、クルーグマン自信が自分のしたことについて説明している。

あとで要点をまとめるつもり。
簡単に書いてあることをまとめると*1

  • 「古い」貿易理論は、入門的な経済学で学ぶもので、貿易をする国は異なる特徴を持っている(産業の生産性が大きく異なり、異なる資源を持ち、貿易するものが違う)新しい貿易理論は、このような説明は多くの世界の貿易を説明できるけれど、それでも多くの貿易については説明できていないという問題意識から来ている。例えば、ドイツとフランス、アメリカとカナダは似たような気候、似たような資源を持つ国なのに貿易を行っている。
  • 似たような気候、似たような資源を持つ国が貿易を行う答えは、大型ジェット機のようなもの取引するためである。規模の経済が働くために、大型ジェット機を作る場所は限られている。その結果大型ジェット機を作る国はそれを輸出し、他の国はそれを輸入することになる。では、誰がこのような大型ジェット機、ある特定の機械、あるモデルの車を作り、世界に向けて輸出するか?新しい貿易理論の答えは「誰でもいい」。世の中にはたくさんの「規模の経済」の働く商品があり、誰でもどんなものでも選ぶことができる。
  • 全体の貿易パターンに関して、ある国がどんなものを作るかは資源のありようや気候で決まる。でも同時に規模の経済で決まる貿易するものもあって、こういうものは似たような国の間でも多くの貿易を発生させる。
  • このようなことは今では当たり前のことかも知れないけれど、1980年代より前にはそうではなかった。こういうことを数式モデルに基づいた理論で説明した人はいなかった。エコノミストは長い間、国際貿易に関して上に書いた古い貿易理論のような世界のことだけ考えてきたということは覚えておいていい。「半分のことは忘れてるじゃない」と言えるこのことは、かなり大きなことだった。
  • 新しい貿易理論を考えてから10年後、労働や資本などの生産要素が(完全ではないけれど)移動する世界を考えてみた。古い貿易論では生産要素の移動は貿易と同じ効果を持つと考えられていた。もし工場やそこで働く人たちが自由に移動できるのであれば、わざわざ貿易などする必要はないしかし、「規模の経済」が働く世界では、経済は分散した資源に従って分散していこうとする力よりも、大きな市場に集中する方向に働く。
  • ヘンリーフォードのT型フォードのことを考えてみると、彼は消費地に近いところにたくさん工場を造ることもできた。でも、彼はミシガン州に大きな工場を造った方が規模の経済によって輸送コストもカバーしても利益が出ることに気づいた。
  • もし限られた場所に生産する場所を集中させるとしたら、どこに立地させるだろう?大きな消費地の近くで、他の生産者たちも生産場所を立地させるような場所だろう。もし中心に向かう力が強ければ、生産場所のある場所への立地が重なり、集中するようになる。歴史的な経緯で生産が集中するようになれば、その場所は中心になり、そのほかの場所は周辺になる。サンベルト(カリフォルニア州からノースカロライナ州に至る北緯37度線以南の温暖な地域)が発展するまでニューイングランドから中西部には製造業が集中している。現在、東海岸には6000万人の人が住んでいる。彼らは他の6000万人が住んでいるからそこに住んでいる。
  • このことも、いまでは明らかに思えることであるけれど、1991年にはそうではなかった。数理モデルによる説明ができてから、言葉で簡単に説明できるようになった。
  • 政策へのインプリケーションは何かと聞きたいかも知れない。でも、この理論の政策形成への教訓は本当に薄い。新しい貿易理論は政府の介入の役割を示唆すると同時に、自由貿易の利益も示唆している。私の貿易と地理学に関する仕事は世界を理解することであって、新しい政策を提言するものではなかった。

*1:一通り書いてみて、簡単ではなくなってしまった...。