国債の国内引き受け持続性

日本の場合、国債の9割以上が国内の引き受けだから巷で言われているような政府の累積債務問題がすぐに起こるようなことはない。でも、今月初めに目にしたこれ

が気になるので、みずほ銀行三菱東京UFJ銀行のレポートを読んでみることにした。
みずほ日本経済インサイト 財政赤字の深刻度

  • 2010年度のマニフェスト関連支出は3.1兆円(子ども手当て、農家戸別補償、高校授業料無償化が主要なもの)。2011年度には10.4兆円さらに7.3兆円の新規財源分が必要。
  • 既存事業の見直し(補正予算の執行停止とか)で2兆円、第1回事業仕分けで1.3兆円を確保。しかしこれらはほとんどが2010年度限りのもの。
  • 日本国債の最大の保有者は国内の金融機関(75%)で、その原資は家計の金融資産。家計の金融資産1,456兆円のうち預貯金804兆円、年金・保険資産398兆円は金融機関を通じて国債市場で運用されている。
  • 2012年以降のGDP成長率を1.5%、現行のような低金利、家計貯蓄率3%、政府支出は社会保障費の自然増のみ許容すると、2025年ごろには国債残高が家計金融資産残高を超える。GDP成長率を3%に上げたり、金利を上げてもほぼ同じような結果。
  • 今後日本の成長率が高まるかどうかに関わらず、財政再建は必要。

経済レビュー 日本国債の国内消化構造はいつまで持続できるか

  • 国債残高は2010年末で637兆円に達する見込み。一般政府の債務残高はグロスで189%、ネットで96%(2009年)。しかし、国内で再建が消化されていることもあり、小国債利回りは低位安定。
  • 国債の94.8%が国内で保有されている。公的部門と非金融企業は負債超過だが、家計の資産超過がこれらを上回っており、国内全体では資金余剰。
  • 金融機関の国債保有額は631兆円(全体の76.4%)。郵貯と中小企業金融機関(187兆円)、保険・年金基金(171兆円)、国内銀行(112兆円)、日銀(73兆円)の保有が多い。
  • 今後も国債発行額の増加が見込まれるが、国内の資金余剰状態の先行きは明るくない。家計の高齢化に伴う貯蓄率減少、現在は借り入れの減っている企業の借り入れ需要の増加の可能性、日銀の「日銀券ルール」による国債買い入れの限界、ゆうちょ銀行など中小金融機関の財政投融資資金から国債へのシフトの終了など。
  • 消費税率と企業の負債超過をパラメーターに試算すると、現状継続に近いケースでも2020年に国内引き受け率は64.6%に低下。

あと、こんな話もある。しかし、民間への融資よりも国債保有のがリスクが高いっていうことになるんだろうか?


考え方としてはみずほのレポートの方が単純ではある。しかし、MUFJの方は企業の負債超過が再び増えるようなことがあればその時は景気回復期だから税収も増えるだろうに、と思ってしまう。
確かに税収を増やすことを考えなければいけないが、とりあえずそれは景気回復による税収増を目指し、一方で歳出構造(特に社会保障関連)と税制を大きく変えるべきというのが自分の個人的な考え。


余談だが、MUFJのレポートのこの図が気になってしまった。

長期国債保有残高が2005年くらいをピークに下がっている。日本の不景気はリーマンショックよりも前の2007年秋くらいから始まっていたと言われているが、その原因を見事に表していると言えるんじゃないか。