円のゆくえを問いなおす

ミャンマーの仕事が終わるころから読み始め、今日、日本からジャカルタへの短期出張の機中で読了。
この本では、6つのポイント(リーマンショック以降の円高の深刻化、円高の深刻化の理由は日本の政策自体にある、円高は自然現象ではない、円高は輸出産業の利益減少や国内産業の空洞化に繋がる、デフレと円高は日本経済に悪影響を与える、円高とデフレの継続は天災でなく人災である)を示し、それを豊富な図表で示しながら円の歴史的な変遷も紹介している。
歴史的な分析は、金本位制と第2次大戦後の固定相場制の時代、変動相場制以降の2つに分けて書かれている。金本位制の崩壊の理由「金融メカニズムの非対称性(貿易黒字国のアメリカが金融緩和を行わずに済ませることができた)」が現在の欧州の状況(貿易黒字国のドイツが一層の金融緩和に協力的でないこと)になぞらえて書かれていること、変動相場制になっても日本では為替相場は政治的に決まってしまうような思い込み(「円高シンドローム」、その大きな理由は日米の貿易問題)が生まれてしまい、バブル崩壊後に米国の貿易問題が日本から中国にシフトしたあとも日本では円高シンドロームが残ってしまい、それが固定相場制時代のレガシー(金融政策よりも財政政策を重視、為替介入、適切な為替レートという考え方)を作り出しているという指摘が面白い。

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)