若者を見殺しにする日本経済

いつもながらの切れ味のよさ(別の言い方をすれば、身も蓋もない書き方)で若者のために取るべき経済政策について論じている。でもこれは、若者のためだけじゃなく、既得権益と闘う経済政策でもある。

まず重要なのは持続的な経済成長を続けること。その下での年金問題、グローバリゼーション、格差、デフレと円高、教育について書いている。この中で目に留まった部分をいくつか列記。

  1. 日本の経済成長(一人あたりGDPの水準)は、名目為替レート(生産性の高い輸出製造業の生産性が反映される)ではなく購買力平価(全ての産業の生産性が反映される)で見れば、米国を越えたことはなく、キャッチアップしていないのに成長率が低下してしまった(P15)。
  2. 財政赤字GDPの6%、最近では30兆円程度なら実質的に財政赤字はないと考えてよい(P48)。
  3. 偉大な政治家とは、後から考えればそうするしかなかったと分かる政策を実行する人物(P49)。
  4. 人口減少に対処するのは輸出や投資ではなくて輸入。農産物を1兆円輸入するのは、57.6万人の労働者を輸入することと同じ(P83)。
  5. 中央銀行の独立よりも金融政策のルール化(インフレ目標政策)こそが望ましい(P159)。
  6. (成長戦略に関連して)どこかにお金をつぎ込むことは、どこかからお金を持ってくること(P166)。
  7. 日本の公的教育支出の対GDP比は他のOECD加盟国より低いが、一人あたり支出額で見ると、高等教育については他のOECD諸国より高く、初等・中等教育は他のOECD諸国と同等(P200)。
  8. 教育とは何かについての基本的な合意がないので、教育をめぐる議論は常に混迷している。私たちの先人は、教育は「型」だという考えを持ち*1、型と独創との葛藤をしてきた(P218)。

若者を見殺しにする日本経済 (ちくま新書)

若者を見殺しにする日本経済 (ちくま新書)

*1:この本のことを思い出した。