左翼入門

NHKの1980年代の大河ドラマ獅子の時代」に出てくる二人の主人公「嘉顕」と「鉄二」の考え方・行動の違いになぞらえて、左翼の歴史(幸徳秋水の時代から戦後のソ連体制の崩壊くらいまで)と、それだけではなく戦後の知識階級(近代主義対文化相対主義)の歴史を語っている。「獅子の時代」はかすかに記憶がある。歴史物を扱うはずの大河ドラマでなんで明治時代、なんか今ひとつ面白くないと小学校中学年当時に思っていた。
「嘉顕」の道は上からの変革。正義感で動き、日本の場合は西洋から持ち込んだ思想や理論を使うということになる。一方で「鉄二」の道は現場の問題解決のために立ち上がる。日本における世の中を変えようという活動はこの二つが対立し、最終的には運動の自滅という形で自滅したと書かれている。
では、どうすればいいのか、著者は事業(活動と言い換えてもいいのかな)は国家レベルではなく、関係者で責任の取れる範囲から始めて立ち上げ・発展期は「嘉顕の道」、事業が成熟すると「鉄二の道」、そしてその活動が停滞をしてきたら再び新たな事業を興して「嘉顕の道」...というように二つを統合するのではなく、それぞれの道が順番に起こるべきと言っている。
なかなかそういう風にうまくいくかどうかは疑問だが、こういう風な活動が起こるためには自立した個人が必要で、日本においても石田梅巌や近江商人の「商人道」があったと言っていて、だから著者は「商人道ノスヽメ」という本を書いていたのだなあとここは納得。