日本経済はなぜ浮上しないのか

年末から読み始め、今年最後の出張、ナミビアに向かう飛行機の上で読了。片岡さんの本は(辛口な方もいらっしゃるようだけど)新しい本になるたびに、やさしく、丁寧に伝えようという工夫を感じる。
この本が出版されたのは消費税10%増税をするかしないかを決定する前の2014年10月だったと思うけれど、アベノミクス1年目の分析(第1章)、消費税増税の影響(第4章)、アベノミクス再機動の提案(5章)は今読んでも全く古さを感じない、というか、ここから状況が動いていないのがなんとも残念だし、不安にもなる。
この本が書かれた以降に起こった大きなイベントは10月末の追加緩和だが、2014年4月の消費税増税の影響(典型的には消費者の消費行動)がそれだけで緩和されるわけでもなく、また効果を持つためには時間も必要になる。財政制作サイドでは給付金や社会保険負担の軽減、金融政策サイドでは日銀法改正などのレジームチェンジに働きかける政策が行われると良いのだが...。なんとなく、今のままではグダグダ進んでしまいそうなきがする。
国際金融に関する2つの章(第2章 円安なのになぜ輸出が増えないか、長期円高の大きな後遺症)も最新の国際収支体系(IMF国際収支アニュアル第6版)でやさしく説明していると思う。政府財政を家計のように把握するのと同じように、一国の国際収支の一部(特に貿易収支)で赤字・黒字というのはもうそろそろやめにしてもいいと思うのだけど。