イスラーム国の衝撃

イスラーム国」の指導者がカリフに就任したと宣言されてからほぼ1年、いったんは縮小に向かうかと思ったその組織はしぶとく存在し、またこの本で書かれているような「遠隔地での、直接のつながりがない組織による合流の表明」も続き、不安定な中東地域の状態が常態化している。また、イラク政権とイランの繋がりの強化など、新しい状況も生まれている。
この本を通じで改めてアル=カーイダからイスラーム国に向かう流れを確認。その流れの間に2011年の「アラブの春」があったけれども、そこでイスラーム主義穏健派が急激に台頭したけれども同時に急激に失墜し、そこから生まれた政治空白に過激派が台頭したという指摘はなるほどと思った。
それから日本のイスラーム専門家によるイスラーム世界の認識の仕方。

「先鋭的」であることに存在意義を見出す論者は、しばしば「イスラーム」を理想化し、それを「アメリカ中心のグローバリズム」への正当な対抗勢力として、あるいは「西欧近代の限界」を超活するための代替肢として対置させる。

と指摘し、この思想を下火になったかつての左翼イデオロギー新興宗教に代わるネガティブな感情のはけ口になりつつあるという指摘。確かにこういうイスラーム世界の捉え方が新たな問題を起こす可能性がある。普通の、大多数とであろうと思われるイスラーム世界の人々の考え方を理解する必要があるんだろう。

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)