WEO October 2008

World Economic Outlook October 2008が出ていた。3章以下の後半部では、インフレ(商品価格)、金融部門の混乱と景気減速、景気対策としての財政政策、新興経済における経常収支不均衡などの話題を扱っている。
前半部の世界経済の状況と今後の見込みについてまとめると、

  • 2007年8月のサブプライム市場の暴落から始まった金融危機は、ここ6ヵ月の間にさらに深刻化し、世界の金融システムのあらゆるところにその影響が見られ、新興経済の市場にも影響が拡大している。2004年来の食料・燃料価格の上昇と需給ギャップの縮小を受けて、インフレ率はここ10年来見られなかった水準まで上昇している。そして、消費バスケットに食料品の割合が多い途上国ほど消費者物価指数の上昇は激しいが、金融政策でインフレ目標を導入している国は、インフレの抑制に健闘している。先進国では、石油価格の上昇が全体のインフレ率を押し上げているが、基本的なインフレ圧力は抑制されている。
  • 世界経済の先行きは、金融情勢は極めて厳しい情勢が続き、世界の経済成長の足かせとなる。商品価格の落ち着き(食料・石油輸入国における交易条件の改善)、米国における住宅市場の改善、新興経済における(勢いは落ち込むと思われるが)高い生産性の伸びと政策の改善から、2009年の後半には回復の地ならしが進む。しかし、経済の改善はゆっくりとしたものになると思われる。
  • 世界の年間平均成長率は、2007年の5.0パーセントから2008年は3.9パーセント、2009年は3.0パーセントになると見込まれる。新興経済においてもこれまでの成長トレンドを下回る成長率になる。景気の悪化と商品市場の安定化のために、2009年の先進国のインフレ率は2パーセント以下に戻る。
  • 世界中の政策当局者は、景気減速局面にある経済を立て直しつつインフレの発生を防ぎ、一方で金融の安定化を図るという極めて困難な課題に直面している。先進国のマクロ経済政策運営では、経済活動を下支えし、金融と実体経済の間の悪循環を断ち切ると同時にインフレリスクにも目を配ることが重要である。短期金利の水準の高いユーロ圏と英国では金融緩和の余地がある。財政政策は全般的な景気対策よりも必要に応じて金融・住宅セクターの安定化に利用すべきで、そのほかは財政の自動安定化機能を(Built-in stabilizer)を活用すべきである。
  • 新興経済および発展途上国におけるマクロ経済政策の優先課題については、政策当局が成長とインフレ・炉すく双方を考慮する必要があるので、かなり違いがある。インフレ率が低下し、同時に景気が減速している国では、金融緩和が適切である。一方、インフレ圧力がなお強まっている国では金融政策のさらなる引き締めが必要である。為替相場を厳格に管理している国では、財政政策を通じた需要の伸びの抑制が必要になってくる。
  • 政府系投資ファンド(SWF)のガバナンス、投資、リスク管理に関する原則と業務慣行について最近合意された(サンチャゴ原則)。されに、現在OECDの下で資本の受け手国に対するガイドライン策定が進められている。

(追記)

日米欧の主要先進3地域が同時に、リセッションにほぼ近い状況になるとみています。具体的には、今年の第3四半期から来年の第2四半期にかけて、成長率はほぼフラットまたはややマイナスの状態が続き、その後、緩慢な速度で成長回復が始まり、2010年の終わりまでに潜在成長率に近い水準にまで回復するというイメージが描かれています。

新興国市場については、デカップリング論は楽観的過ぎ、実際は相当の影響を受けるとの予測が立てられています。ただ、新興国市場は成長率のレベルがもともと高いので、成長率低下幅は同じでも、全体としては下支えするというのがIMFの見方です。

やはり現状よりもう一段の、かなりはっきりした景気後退に入るということだろうか。