世界経済の潮流 2008年 II

以前は「世界経済白書」が12月に発表されていたが、2002年からは「世界経済の潮流」が6月と12月に発表されているようだ。知らなかった。
今日発表された「2008年 II」の概要をまとめると、

  1. 世界金融危機の発生と政策対応
    1. 2008年9月15日の米大手投資銀行の破綻を契機として、「世界金融危機」が 発生した。欧米では、金融機関の経営不安が続くとともに、市場が機能不全に陥った。
    2. ヨーロッパの危機は、アメリカ発の影響もあるが、アメリカ以上に高い金融機関のレバレッジ比率や住宅バブルの崩壊等、ヨーロッパ自身の問題によるところが大きい。
    3. 新興国では、アメリカ発の直接の影響は小さかったものの、「質への逃避」や欧米金融機関による「レバレッジの解消」の影響を受けて、株価及び通貨が下落した。
    4. 世界大恐慌と比較すると、今回の危機の規模は、実物面及び金融面とも今のところ小さいが*1、(i)グローバルな危機、(ii)危機の波及が速い、(iii)証券化による複雑化という点が特徴。
    5. 金融危機の発生に対し、各国は迅速に危機対応策を実施。金融機関への資本注入とともに、不良債権の買取り等により金融機関のバランスシートから不良債権を切り離すことが重要だが、今のところ資本注入が先行している。
    6. 危機対応策により、中央銀行のバランスシートが急拡大しており、財政赤字の急激な拡大懸念とあいまって、「通貨の信認」の問題が発生する可能性がある。将来の「出口戦略」として、財政健全化に向けた道筋も示す必要もある*2
  2. 先進国同時景気後退と今後の世界経済
    1. アメリカでは、2007年12月から景気後退が始まる。個人消費が減少するなど内需が低迷する一方、外需が景気を下支えする「外需依存型」に。
    2. 先行きを見る上では、(i)金融危機が金融機関の貸出行動を通じて実体経済に与える影響、(ii)住宅市場の調整、(iii)雇用情勢の悪化、(iv)家計のバランスシート調整の4つが重要なポイント。
    3. アメリカ経済の見通しとリスク要因:(i)2009年はマイナス成長。金融危機の影響が2009年中に収束すると仮定すると、2009年の終わりには、景気は緩やかに持ち直す見込み。(2)ただし、以下のような下振れリスクの可能性が圧倒的に大きく、その場合は、2010年になっても回復スピードは遅く、L字型の景気回復パターンとなる。

*1:実際のところ、もう見え始めていると思うが書いているときにはまだだったかな。

*2:通貨の信任の問題が発生するほどになれば、デフレの発生は防げると思うんだが...。財政赤字云々も、ちょっと諸外国の基本的な考え方とはズレているような気が...。