産業構造ビジョン2010

この前ちょっとだけ取り上げてみた産業構造ビジョン、報告書を読む時間はないのでプレゼン資料だけざっと見てみた。
産業構造審議会産業競争力部会 - 概要
現状認識もこれからの方向性もよく書かれているとは思う。ただ、思うことがいくつか。

  • まず、現状認識について。日本の経済的な地位低下が指摘されているが、サプライサイドの産業競争力低下というよりもやはり20年間もデフレを続けてしまったことが最も大きな原因だと思う。そのような状況の中で国際経済の変化(90年代以降の旧共産国市場経済への参加、新興国の経済成長)に対応できる余裕を失ってしまっていたんじゃないだろうか。
  • 2つ目は企業のビジネスモデルの問題や、国内の競合が多いなど産業組織論的な問題への対応。問題は指摘できるが、(今のご時世では時代に合わない行政指導以外の方法で)公共がこういう問題にどのように対応できるんだろう。
  • 3つ目は税制・会計制度の問題、物流インフラへの問題、人材の問題への対応。経産省のテリトリーから外れたり他の役所と調整が必要なところで、問題の是正のためにどれくらい力を発揮できるんだろう。
  • 4つ目は5つの戦略産業(インフラ関連、次世代エネルギー、文化産業、医療・介護・健康・子育て、先端分野)について。これくらいの選択を公共がするくらいは問題ないのかも知れないが、なんか関係部会の意向も強く効いている気が...。あと、文化産業とかってこういうお墨付きがついた時点で健全な発展が難しいんじゃないか。
  • 5つ目は施策についてある特定の戦略産業に資源配分をしようという感じでなく、横断的施策を列挙しているのは好ましいと思うんだが、であれば5つの戦略産業をわざわざ決める意味っていうのはあるんだろうか。

経産省が一生懸命自らのアイデンティティを確保するために頑張っているというのはよく分かるビジョンになっている。

追記(6月16日)

5つ目のコメントとも関連して。公共が戦略産業を選べないだろうという批判はあるだろうが、みんなを鼓舞する意味である程度選び出すのはいいんじゃないかと思う。ただ、その選び方の論理もそれなりに通っていないといけないし、そういう産業のサプライサイドに資源を配分するようなのはよくないと思う*1

*1:逆に言うと、需要を喚起するようなことをある程度してもいいと思う。最近でいえばエコポイントとか、エコカーの減税とか。