貧乏人の経済学

去年の夏、ラオスで仕事をしていたころに読み始めて6章まで読んでいた。しかし、なぜかその後ブランクができてしまい、ようやく読了。
食糧(2章)、保健(3章)、教育(4章)、家族(5章)、リスク・保険(6章)、マイクロファイナンス(7章)、貯金(8章)、起業・職業(9章)、政治・制度(10章)について、ランダム化対照試行を中心とした研究で明らかになってきたことが書かれている。その中にはこれまでこちら側の人たちが「なぜ?」と思ってきたことも多い。
全体を通した結論的な部分では、5つの教訓がまとめられている。

  1. 貧乏な人は需要な情報を持っていないことが多く、間違ったことを信じている。情報キャンペーンを行うためには人々が知らなかったことを単純に魅力的に伝えることが必要。
  2. 貧乏な人は自分の人生のあまりの多くの側面(例えば安全な水の確保、栄養の摂取、貯金の方法、リスクへの対応、職業)について責任を背負い込んでいる。
  3. 一部の市場が貧乏人に提供されていなかったり、そこで貧乏人がかなり不利な価格に直面しているのは、それなりの理由がある(ローンの金利、貯金、保険)。貧乏人を対象とした市場は形成されにくい。そのため、モノやサービスを無料で提供したり、彼ら自身が彼ら自身によいことを行ったら報酬を渡すような仕組みも必要。
  4. 政策がうまくいかない理由の多くは、政策設計における無知(ignorance)、イデオロギー(ideology)、惰性(inertia)の3つのIが原因となることが多い。既存の社会政治構造を変えずにガバナンスや政策を改善することは可能で、貧乏な国は失敗が運命付けられているわけではない。
  5. 人々に何ができて何ができないという期待はしばしば自己成就的な予言に早変わりする。成功のサイクルを開始させるのに必要であれば、モノや現金を渡すのを尻込みすべきではない。

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える