TPPでさらに強くなる日本

いつもの原田氏らしい、経済学を武器にすっぱりと問題を斬っているという印象を受ける著作。小気味よいが、斬られる方は痛いかもしれない。
最初に、TPPの議論に対して提示される10の批判に応え、その中から大きな批判である「毒素条項」と農業への影響について2章、3章で掘り下げている。
毒素条項(ISDS条項、非違反提訴、ラチェット条項、ネガティブ・リスト方式、現地駐在義務の禁止、未来の最恵国待遇)はどれも誤解や他条項との混同に基づくものであること説明し、
農業への影響は、保護の程度が大きく被害額を受けると思われる農業総生産4.6兆円の45%(2.1兆円)について、農家が損をする部分(消費者の利益になる部分)を個別所得保証すればよいことを説明し、農業の構造改革(本当に農業で経済活動を行っている農家への土地の集約化や農産物ごとの差別の撤廃、食品産業を農業と位置付けること、個別所得保証制度/多面的昨日直接支払い制度の検討)を書いている。この部分は興味深かった。
4章で日本政府の交渉力について、歴史的な経済交渉を概観しつつ、日本政府の交渉がこれまで必ずしも交渉べたではなかったとしつつ、日本のエリートが日米摩擦を通じて輸出は悪、円安は輸出を増やす悪いものとイメージを植え付けられたことが国益を損ねたのではないかと書いている。
5章では内閣府農水省経産省のTPP参加による(前提の違いもあって、あまりにも異なりすぎる結果)を分析しつつ、穏当な推計はGDPの増加は3兆円程度、農業部門の損失は1兆円程度ではないかとしている(これはあくまでも貿易部門の結果)。

TPPでさらに強くなる日本

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