ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼

この本の元になったSynodosの連載は一通り読んでいたけれど、書籍になって改めて全体の構成がすっきりした。1970年台後半以降のマクロ経済学・経済政策をこういう視点でまとめるたのはかなり斬新に感じる。『松尾経済学』がコンパクトにまとめられている感じがする。<<この本の主題は、1970年代からの「転換X」への誤解が現在の混乱を招いている。>>
というもの。「転換X」への誤解というのは、1970年代のケインズ政策に対する新自由主義(及びその後の第三の道)、1990年代のソ連型経済システムの崩壊と市場経済の導入を指している。ではその転換Xというのは何か、をハイエク(ルールの重要性)や反ケインズ派(予想の重要性)の成果から「リスク・決定・責任」と導いている。
そして最後には、左派の側から「転換X」に則った政策のあり方を語っている。新スウェーデンモデルでの地域事業の運営の話(リーダーに決定と責任が集中するフェーズ、関係当事者に共有されるフェーズ)は以前読んだ新しい左翼入門と重なる話だなあと思っていたら、やはりこの部分を中心に扱うことを意図していたと書かれていて、なるほどと思った。