「30万都市」が日本を救う!

最近、もっぱら本は自炊するか電子書籍で読んでいたのだが、この本は本当に久しぶりに本の形で読んだ。ナミビアに出張に向かう途中、ヨハネスブルグに向かう機内で読了。気になった部分に付箋を貼り、読後に写経をした。
この本の構成は田中先生による序論と補論、それから田中先生、飯田先生、麻木久仁子さんの三人による鼎談の形になっている。取り上げる話題も2015年8月時点でのアベノミクスの評価と(2014年4月の消費税増税から1年半後のアベノミクスの状況)と海外経済環境の大きな変化(中国経済の減速と政府による株式市場、外国為替市場のコントロール)、安倍政権の地方創生に関連する都市と地方、特に地方都市をどうするかという話題、それから補論で取り上げられている集団安全保障の話題。
アベノミクスの状況が2014年の春以降一進一退に見えるのは消費税増税の影響。消費税増税によってレフレレジームが毀損し、低所得者層に大きな悪影響を与えてしまった(それが消費の低下に現れている)。この状況に対応するには一段の金融緩和や財政政策に訴える必要がある。
地方都市をどうするかは、これまで経済学的な視点からは取り上げられてこなかった。人口減少のマイナス側面と「自治体消滅」ばかり大きく取り上げられてきたが、地方に30万都市を作る努力を行うこと、そのためには地方都市部への都市計画や投資の集中と、移住補助金(農村から地方都市に移住すること、大都市から地方都市に移動することの2つが考えられる)のような経済的インセンティブも活用すべしというのがこの本でのコンセンサス。
最後の集団的自衛権の経済学的な分析も、過去に研究も行われてきたのに安保法制の議論の中ではあまり取り上げられなかった。憲法を専門とする人たちの違憲性が大きく取り上げられたが、国際関係の視点や経済医学的な視点は同様には扱われなかった。実務的な側面も含めてもっと多面的な点から評価されてしかるべきだったと思う。